世界的ダンサーから経営者に。バレエとビジネス共に成功させた20年
ロンドンのロイヤル・バレエ団で東洋人初のプリンシパルとして華々しい成功を収めた熊川哲也が帰国して、自らのバレエ団であるKバレエカンパニーを設立したのが、1999年1月のことだった。当初こそコンテンポラリーダンスや小品が多かったが、その後レパートリーをクラシック全幕ものバレエに着実に広げてきた。国からの助成金を受けずに株式会社を運営し、クラシックバレエの伝統を継承しつつビジネスとして成功を続ける熊川は、日本のバレエ環境を変え、多くの観客をバレエに呼び込んだ開拓者だ。所属ダンサーたちや専属オーケストラも大きく成長し、公演の成功をがっちり支えている。バレエスクールや大人向けのバレエスタジオ、ジュニア・バレエカンパニーの活動も順調だ。
その20年で何があったのか、熊川哲也が新著『完璧という領域』にまとめた。バレエ団の経営ではつねに危機感がありながら、「偉大な芸術」が息づく「完璧という領域」にたどり着こうと、すべてのリソースを動員してきた。それはどのような心境だったのだろうか。著書から一部を抜粋する。読後、あなたもきっと誰かに言いたくなるだろう、「ねえ、バレエ観に行こうよ!」