あの戦争でアメリカを勝たせたのは、日系人陸軍情報部員たちだった
442連隊のことはご存知だろうか。第二次大戦中に編成されたアメリカの陸軍部隊で、士官を除くほとんどの隊員は日系二世で構成された。強制収容所から志願した西海岸出身の日系二世とハワイ出身の日系兵士たちは、ヨーロッパ戦線に派遣される。そこで彼らは、全滅寸前だったテキサス大隊の救出、難攻不落といわれたゴシック・ラインのドイツ軍要塞攻略など、目覚ましい戦果を上げ、アメリカ史上最強の陸軍部隊と賞賛されることになる。大戦中最も多くの勲章を得ている部隊なのだが、戦死率も飛び抜けて高く、彼らは、自らの命を懸けて、日系アメリカ人の地位向上を勝ち取ったともいえる。
一方で、同じ日系のアメリカ陸軍兵士でありながら、太平洋戦線で日本軍と戦った者たちもいた。対日戦争の情報戦の主役だった彼らは、終戦時のアメリカ大統領トルーマンが「人間秘密兵器」と称し、GHQのウィロビー少将は、「彼らのおかげでこの戦争を2年早く終結できた」と絶賛している。にもかかわらず、まるで歴史の闇に葬り去られるように、その存在を秘匿されてきたのはなぜなのか。彼らは何を考え、いかにして戦ったのか。
この日本と戦った日系人兵士を題材にしたドキュメンタリー映画を監督したすずきじゅんいち氏によれば、かれらが背負わされた運命はあまりに複雑なものだったという。